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ベルファストのkaitoのレビュー・感想・評価

ベルファスト(2021年製作の映画)
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ケネス・ブラナーの幼少期を描いた自伝的映画で、北アイルランド内のプロテスタント(スコットランド系)とカトリック(アイルランド系)の紛争を背景に、小さな家族の話を描く『この世界の片隅に』型映画。

現代のベルファストの街の映像から、69年の白黒の映像にシームレスで長回しで移行し、からの暴動シーンというつかみのオープニングが良い。

シンメトリーを多用しているデザインされた画面と、そこで描かれるユーモアから、エンタメ寄りなケン・ローチという感じや、アレクサンダー・ペインの『ネブラスカ』とか小津安二郎映画も彷彿とさせる。

50年前という舞台設定ということで白黒の映像にしているのかとシンプルに捉えていたら、エンターテイメントの世界だけが燦然と輝くようなカラーで描かれていて、当時の暗い現実との対比の効果も狙っていて唸らされた。

『ムーンライト』の第一部とか、『メイジーの瞳』とか、『フロリダ・プロジェクト』とか、『ジョジョ・ラビット』なんかも連想させる、子供の視点で描かれた子供視点映画でもあり、暴力的でハードな世界を描きすぎていない明るさがある。この中で多く交わされているユーモアこそが豊かに生きるための彼らの生活の知恵と感じさせられ、これもまた感動的。

プロテスタント過激派の男との対決シーンは西部劇オマージュな作りで、ここも良かった。

その伏線となっている随所で登場するテレビの世界の西部劇、ミニスカートに代表される当時の衣装や(少ない数の服を組み合わせによってオシャレに見せているという衣装の工夫も感心した)、アポロ11号ネタ、スタートレックなど、当時の再現も楽しいけど、自分に知識が足りず、全部を理解できなかったのは悔やまれる。
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