Yui

黄色い星の子供たちのYuiのレビュー・感想・評価

黄色い星の子供たち(2010年製作の映画)
4.3
1942年ナチス占領下のパリ、ユダヤ人は胸に黄色い星をつけるよう義務付けられ、公共施設への立ち入りを禁じられた。それでも11歳のジョーと家族、隣人たちはささやかな暮らしが続くと信じていた。同年7月16日、フランス警察によるユダヤ人一斉検挙が始まり、およそ1万3,000人もの人々がヴェル・ディヴへと送られる。

1942年、フランス政府によって行われたユダヤ人一斉検挙「ヴェル・ディヴ事件」を、過酷な運命に翻弄された子どもたちの視点から描いた真実の物語。


フランスで、当時のユダヤ人達が胸に付ける黄色い星のワッペン。これはユダヤを象徴するダビデの星✡️。これを区別の為に付けさせられるなんて、差別も甚だしく、その後の行為は本当に吐き気がするほど非人道的。人間のする事じゃない。

直接的に死を感じさせる“グロい“というような映像はほぼなかったけど、これは本当の意味でグロテスクでした。とにかく悲しみ、苦しみ、怒りが溢れて来る。思考も全く理解出来ない。子供や家族が寝込みを襲われ、強制的にヴェル・ディヴに収容され、食べ物も水もほぼ与えられず、どんどん弱り病気になる中、ヒトラー達は贅沢三昧。信じられない…。

冒頭から最後まで救いだったのは、パリ市民達にたくさんの味方がいた事。当時の政府に不満があっただろうし、ユダヤ人だからと突然非道な扱いを受ける隣人や友人、知らない人だって、放ってはおけないですよね。2万数千人いたユダヤ人の中で、1万人以上検挙されなかったのは、フランス人が匿っていたから。これが本来の正常な人間のする事だと思う。

ユダヤ人達を救おうとずっと必死だった看護師のアネット。確かに一人の力は小さい。小さかったけど、そういう人がたくさんいたという事実にも涙が溢れながら、少しだけ心が温かくなりました。

たくさんの人から話を聞いて作ったという本作。地獄以上の苦しみの中でも、消防士のエピソードや、脱出を黙っていた憲兵など、優しさや思いやりのある話がちょこちょこ入ってくるのは、それも事実であり、嬉しいとかありがとうとか、心に残っているからなんだろうな。人の記憶って凄い。

収容所の中でも地獄だったけど、その後、親と引き離され、列車に乗せられた4,051人の子供達。その子供達は、結局誰1人として戻らなかったそう…。


辛い。辛い以外の何でもない。
決して幸せな気持ちになんてならない。
胸が苦しく、張り裂けそうで、
とにかく涙が止まらなかった。
でも、忘れてはいけない史実。
多くの人に観てもらいたい作品です。


第二次大戦終戦50年の1955年に、当時のフランス・シラク大統領は、大戦中にフランス政府がユダヤ人虐殺へ関与していたと声明を発表したそう。終戦後に頑に否定してきたこの史実を正式に認めたのです。

だからこそ本作が出来たんでしょうね。
当時フランスが行った卑劣な所業は決して許されない事だけれど、こうした行いを悔い改め、繰り返さず、後世に伝えて行く為にも、必要な作品だと思います。若い世代は知らないと思う。ナチスと言えばドイツ。私も恥ずかしながら知らなかった。まだ色んな歴史が、頭の中できちんと整理されていないけど、まだまだ学んで行きたいと、より一層思わされました。

辛いけど、知る為の作品はやっぱり好きです。

たくさん泣いたけど、涙の分だけ
史実も感じた事も、心に刻みたいと思います。

もっと学んだら、また観返したいです。









ここからネタバレ⚠️⚠️⚠️


















上手く逃げる事が出来て、優しいフランス人の養子になったジョー。アネットとの再会のシーンは涙が止まらなかったけど、その後の人混みで周りを見渡すジョーを見たら、きっとこういう子達がたくさんいて、一生人混みの中に家族や友達を探し続けるんだろうな…そうしながら生きてきた人達がたくさんいるんだろうな…と思ったら、言葉にならない涙が止まらなかった。

そしてノノ。あんなに天真爛漫で子供らしくて可愛かったのに、アネットとの再会では、表情と声を失い、あの可愛い可愛い笑顔を観る事は出来なかった…。下らない人種差別、迫害で、子供の心を奪っていいはずがないのに。


ジョーは収容所のシーンに、自分の娘を連れて参加したそうです。この出来事だけでも涙が止まってくれない…😭 しかも撮影日は偶然にも、一斉検挙が行われた7月16日だったそうで、皆で黙祷を捧げたのだとか。

生きている
ってこういう事だなと感じました。



2022-164
Yui

Yui