櫻イミト

象牙色のアイドルの櫻イミトのレビュー・感想・評価

象牙色のアイドル(1969年製作の映画)
4.5
「ザ・チャイルド」(1976)のナルシソ・イバネッツ・セラドール監督の映画デビュー作。「サスペリア」(1977)に大きな影響を与えたスペイン産ゴシックホラー。1960年代末期の美少年アイドル、ジョン・モルダー・ブラウンの初主演作。

19世紀のフランス。女子寄宿舎に転校生テレーズが入学した。規律に厳しいフルノー校長(リリー・パーマー)、その右腕となり生徒を支配する少女イレーヌ、突然行方不明するクラスメイトと不安の多い日々。そんな中、2階に住む校長の息子ルイ(ジョン・モルダー・ブラウン)と出会いやがて密会するようになる。しかし彼女には残酷な運命が待ち受けていた。。。

最高に好みの一本だった。作り込まれたアンティークな美術セットとクラシカルな女生徒たちの衣装(当時のスペイン映画では異例の高額製作費だったとの事)。ゴシックムード満点の寄宿舎を舞台に、前半では思いもしなかった猟奇的な展開が繰り広げられる。物語の背景に思春期の鬱屈した性が、目立ち過ぎずに描かれているのも高く評価したい。

美内すずえをはじめ1970年代の少女ホラーコミックに多大な影響を与えたのは一目瞭然。初主演作で女子入浴室を覗く役をやらされたジョン・モルダー・ブラウン(当時16歳)は気の毒だったが、彼の美少年ぶりが本作を耽美ホラーの傑作に押し上げている。

シナリオ・演出・撮影・美術・キャストと、最後まで隙が無く好みだった。初ソフト化が2005年と遅かったので今ではあまり知られていない作品だが、個人的には偏愛の一本となった。スコアが高くない無名映画でも個人的にツボな一本は埋もれているのだと再認識。

※女子寄宿学校ホラーとしては後の「サスペリア」(1977)に繋がる。大本を辿れば「制服の処女」(1931)が始祖であることに気付く。

寄宿舎モノと似たジャンルに修道院モノがあるが、映画史的にどのように交わっているのか興味が湧いた。悪魔崇拝との関わりなど・・・。近年まで続いているのは「ベネデッタ」(2021)など修道院モノかもしれない。
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