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沓掛時次郎 遊侠一匹のmitakosamaのレビュー・感想・評価

沓掛時次郎 遊侠一匹(1966年製作の映画)
3.9
東映YOUTUBEにて。何度か映画化されている沓掛時次郎。餡かけじゃない方の本家時次郎だ。今作は錦之介バージョン。サブタイトルがついてるし錦之介で何作か作られてるのかと思ったが、今作だけだったのね。

冒頭、諸国を旅する時次郎は、渥美清演じる駆け出しの股旅と行動を共にしてる。
この時点でちょっとシリーズの続編っぽいもんな。(というか、そういう作品に見えるように作っているんだろう。)
しかもこのあとに、時次郎は飯岡助五郎と笹川繁蔵との大利根河原の決闘に関与したと明言されている。まるで座頭市の1作目みたいじゃん。

時次郎は旅先で草鞋を脱いで世話になった組があるが、組同士の抗争に巻き込まれるのにウンザリしていて渡世の仁義を無視して旅立とうとする。
農民上がりで侠客に憧れる渥美清は単身敵陣に乗り込み殺されちゃう。ええ?渥美清が殺される役って結構衝撃的。しかも血まみれで青白い死骸の顔を晒してる。寅さんが…

渡世の世界が厭になってる時次郎だけど、結局旅先で世話になっている組に一宿一飯の恩義で人を斬らねばならぬ。しかも斬った男に残された家族を任されたら、その妻と子が旅先で一緒になった者だと判る。
母子を知り合いに届けるも亡くなっており、しかも旅先で母親が病に倒れる。甲斐甲斐しく面倒見る時次郎だが、親子は旅立ってしまう。

ここから一気に1年後。旅先でコタツに入りながら酔って宿屋の女将に事の顛末を話し愚痴をこぼす。コレが長回しで中々魅せる。センチメンタルでダメになっている錦之介の演技がまた新鮮だ。

ココでまさかの再会。薬代を稼ぐために用心棒に入るが戦っている最中に母親は死んじゃう。
この母親役が池内淳子なのだが、薄幸そうな役どころをコレまた好演。死に際に死に化粧の紅をを自らさすシーンの悲しくも美しい様よ。

また全編に渡り加藤泰の演出が冴えるのよ。監督特有のローアングルも見もの。ニワトリを手前に置いての地面からのアングル。例のコタツのシーンもかなり下から撮ってる。この映像シーンの美しさが、沓掛時次郎が渡世に疲れながらも燐として生きる強さにリンクして実に素晴らしい。
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