Sari

すぎ去りし日の…のSariのレビュー・感想・評価

すぎ去りし日の…(1970年製作の映画)
4.0
ジャンル映画のクロード・ソーテ監督が、初めて男女の愛というテーマに臨み新境地を開拓した恋愛ドラマ。

妻と別居中の中年男ピエール(ミシェル・ピコリ)は若い美女エレーヌ(ロミー・シュナイダー)と同棲中。息子に合うと決心が緩み、彼女とヴァカンスに出る約束を反故にする。だが、やはりエレーヌへの気持ちを抑え難く、猛スピードで車を飛ばして会いに行く最中に…。

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物語はいきなりアルファロメオが横転する交通事故現場から始まる。瀕死の重傷を負った中年男の脳裏に、それまでの人生が走馬灯のように回想される。

事故の場面が、時間軸をずらして繰り返し再現される構成が秀逸である。
その男の回想シーンでは過去と幻想が入り混じるが、フラッシュバック、スローモーション、逆回しなどを織り交ぜた編集も印象的である。時間軸と言ってもそれほど複雑な物語ではないので、雰囲気だけでも十分に浸れる作品である。

自動車事故のリアルな描写(特にミシェル・ピコリが実際に車を運転しているかのような回転スローモーション)ジャンル映画の経験がここで発揮していると思われる。
またクロード・ソーテ監督の冷徹さを帯びた演出が、切ない大人の悲恋でありながら、単なるメロドラマに陥ることを許さない。

ミシェル・ピコリは常に煙草を吸っており、中年男の惑いを巧みに演じている。
愛人役ロミー・シュナイダーの憂いを帯びた美しさが一層切なさを募らせ、妻役がレア・マッセリというのもまた心憎い。

フィリップ・サルドの音楽が切なく美しい。
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