こーたろー

ゲド戦記のこーたろーのレビュー・感想・評価

ゲド戦記(2006年製作の映画)
3.5
再鑑賞。最後に見たのは10年以上前。世間で言われているほど悪い作品ではない気がする。

この作品を悪く言う時に、原作と違いすぎと批評する人が多いがそれは見当違いだと思う。
原作をアニメ化するにあたって無駄な部分を削いで逆に必要な部分を足す作業は必ず発生するし、特に原作が小説であればなおさらそのように感じる。
しかし、本作ではそれ以外の要素で欠けている部分も見られる。本作のテーマはセリフからも分かるように、いつか死ぬことを受け入れつつ生きて行くことの大切さであり、メメントモリの考え方そのものである。このテーマ自体は素晴らしいのだが、そのメッセージの伝え方に問題がある。宮崎駿は複雑なテーマを登場人物の思想からくる行動や生物同士の対立、それを取り巻く自然環境の描写から丁寧に問題を観客に浮かばさせるように作られている。しかし、本作はテーマの根幹的な部分を観客に考えさせるのではなく、登場人物が割と淡々と直接的に伝えてしまう。確かにその方がわかりやすくはあるが、見た後に深く心に残るのは前者の方である。それは観客が考えるといったプロセスが発生しているからだ。
しかも、本作はセリフで中途半端に世界観の説明を入れているから説明不足に感じやすくなっているといった側面もある。映画において説明不足であることは全く問題ない。ハウルの動く城は、世界観や怒っている出来事についてほとんど説明がなく場面が進行して行く。それでも面白く見れているのは人物の行動に一貫性があるからだ。本作では中途半端に世界観の説明をキャラクターに語らせてはいるが、全てを説明できるほどの尺もないため結果的に説明不足感が出てしまっている。それであれば最初から説明を全くキャラクターにさせず人物の行動や些細なセリフから過去に何があったとか世界観が次第にわかっていくような作りにするべきであったと思う。

結果的に悪いところばかり言っているが、テーマ時代は好きだし歌も作品の雰囲気に合っててそこまで嫌いな作品ではない。また時間が経ったら見返すかもしれない。