半兵衛

あらくれの半兵衛のレビュー・感想・評価

あらくれ(1957年製作の映画)
4.3
文芸映画と見せかけて、モラハラやセクハラ、せせこましい根性の持ち主のくせに何かとマウントを取ってくる奴らと世の中のムカつく奴らに怒りをぶつける強い女の痛快ドラマ。主人公を演じる高峰秀子の陽気で知的なキャラクターが、やっていることは凄まじいのにチャーミングで憎めない女性像に昇華している。そしてむかついた男性にホースで水をぶつけたり、腹のたった女の着物を剥いだりと60年前とは思えない激しい暴力に圧倒される。

疑り深い上原謙、イケメンだけど気弱な森雅之、威張りたがりな加東大介と出てくる男性がことごとくろくな奴がいないので、彼女の怒りが爆発し暴走する姿がより痛快に思えてくる。こういうアホな男性ばかり登場する映画だと大抵女性キャラは自立した人ばかりで結束していく…という展開になりがちだけどこの映画は表向きは貞淑だが実は淫乱な丹阿弥谷津子をはじめ女性のほうもろくな奴が出てこず、大正時代という世の中で自立という精神を持つ彼女が如何に特異な存在か、そうした時代で自分を持って生きる辛さというのが浮かび上がる。

高峰秀子が偽善的な男性となった夫の加東大介の元から去るラストは、男性社会との訣別を描いているよう。そして何があっても抵抗し自分の決めた道へひたすら進む決意を感じる高峰の姿は眩しい。
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