このレビューはネタバレを含みます
「中身は関係ない」。
最後のその言葉がすべてを物語っていたのでしょうか。「僕の奥に眠る錯乱と狂気、悪徳と邪悪さ」、それが表出してもしなくても関係がない。どうであれ存在そのものが悪である。しかし誰もそれを裁くことはできない。目に見えない実態を理解することができないからだ。
主人公は結局のところ、社会的に罪を犯すことはなかったが、誰よりも己の罪を知っている。誰よりも己に向き合ったのだと言える。
一方で人々は未だに己を知らず、無自覚な罪を抱えて、愚かに生きている。しかし人間の持つ醜悪さからは「誰も逃れられない」のだ。……「この痛み」を理解できる人は何処にもいない。
