ペジオ

フィクサーのペジオのレビュー・感想・評価

フィクサー(2007年製作の映画)
4.4
きっかけとは人生に挿入される不自然さ

時系列のひねりにはあまり意味を感じなかったが、その結果序盤で描かれる事になった主人公の「きっかけ」のシーンの「現実感の無さ」が美しい(爆破の音が来るタイミングとか、主人公を軸にして対角線上に配置された「聖なるもの」と「俗なるもの」の構図も象徴的で良い。)

アーサーさんにとっての「きっかけ」は原告団の少女だったのだろうか
彼が汚れちまったと思っていた自らの人生に「突如として」現れた「純粋なるもの」
彼の起こした騒動から始まるこの映画のストーリー自体が、主人公にとっての「きっかけ」を描いていたとも言える

映画の悪役を引き受けるカレンさんも本心では自分の生き方が「正しい」とは思ってはいなかっただろうに
鏡の前で口上を練習する姿は、自分に「これが正しい」と無理矢理言い聞かせている様で痛々しい
形から入るイメージ先行の彼女が裏の人間に出会ってしまった事で自ら堕ちていったのは、間違った正しさを信奉するが故の「流れるような自然さ」があった(「こういうものなんでしょ…?」みたいな不安定さが良い。)
彼女にも「きっかけ」さえあれば…

中心となる三者それぞれのキャラクターの心情が丁寧に描かれていた
演じる役者陣がそれぞれアカデミー賞にノミネートされたのは納得
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