Omizu

愛のイエントルのOmizuのレビュー・感想・評価

愛のイエントル(1983年製作の映画)
3.4
【第56回アカデミー賞 作曲賞受賞】
バーブラ・ストライサンドが製作、監督、主演をつとめたミュージカル映画。アカデミー賞では助演女優賞(エイミー・アーヴィング)など4部門5ノミネートされ、作曲賞を受賞した。

話にやや無理があるかなとは思うものの、バーブラが伝えたいフェミニズム的メッセージが存分に詰まった意欲的な作品だと思った。日本ではDVDになっていないのが残念だが、確かに内容としては地味だし仕方ないのかな。

閉鎖的なユダヤ人社会において、学問で身を立てようと男装する女性を描いた内省的なミュージカル。この間観た『ハロー・ドーリー!』のように大々的に歌って踊るというよりも心の中で歌い上げるような感じ。同じバーブラ主演でもだいぶ違う。

女性が男装して最後までバレず、しかも親友の婚約者から惚れられちゃう、という展開には少し都合の良さを感じる。そんなに上手く展開がいくものかな…?違和感はある。

ただ、やはりバーブラの歌は素晴らしく、彼女自身が表現したフェミニズム的メッセージには大いに共感できる。演出も少々荒削りな部分は目立つものの、監督デビューとは思えない堂々としたもの。

かなりの意欲作で、それなりの価値はあると思っただけに扱いがちょっと可哀想。当時のアカデミー賞でも作品賞や監督賞にはノミネートされず、今も日本でのDVD販売はなし。こんなに冷遇されるべき作品ではないと思う。

確かに内容は地味だが、ミュージカルとしても女性映画としてもなかなかに見応えがある良作であった。
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