ミヤウチ

天安門、恋人たちのミヤウチのレビュー・感想・評価

天安門、恋人たち(2006年製作の映画)
5.0
エロスとタナトスの交錯。

天安門事件の時代を生きた人間のメンタリティがよく描かれている映画。
当時特に家父長制的で性保守主義的であった中国における女性のリビドーの肯定と、社会的な背景に連動する人間の心の機微双方をリアルに描写した名作。

細部が非常に上手くまとまっている。
政治的な色合いが思いの外薄く、希望に満ちた(ある種祭りのような)高揚感の下に行われていた民主化運動、それゆえ事件の後訪れた虚脱感、ヒロインである余紅の日記の暗示性、そういった希望と絶望の対比や社会への閉塞感を背景に、民主化への熱狂と喪失感と生々しくリアリティのある恋愛模様が上手くシンクロして描かれている秀作。

欲を言えば、邦題も原題と同じく「頤和園」で良かったと思う。焦点は登場人物の心理描写にあるため、タイトルに政治色は必要ないし、何よりカッコ良くない。
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