するとら

街のあかりのするとらのレビュー・感想・評価

街のあかり(2006年製作の映画)
4.2
絶望の淵に立たされ続けあらがうことせず墜ちていく不器用な主人公
騙されても愛した女を庇い捨てられた犬を気にかけ与えられた仕事は真面目にこなす
そんな主人公にあまりに理不尽に襲い掛かる不幸の連続が痛いほど突き刺さる
あまりに無抵抗な主人公に苛立ちを覚えるといったレビューがみられたが 人間関係の構築ができずどこか幼児性を孕み孤独のまま中年を迎えた人間がおそらく初めて愛した女性であったこと
彼女を傷付けないプライドこそが主人公の自尊心を保っていたと思えば主人公の気持ちには痛いほど同情してしまいます

主人公を騙したマフィアの女も決して幸せだったとは言い難い ボスに身体を委ね言われるがままに仕事をこなし酒を飲む男たちの傍らで掃除機をかける姿
勿論彼女のしたことは悪だけど主人公に対して何度も負け犬だと言っていたその深層には自分の置かれた状況に対してのコンプレックスが含まれていたのかもしれません

社会的に底辺と呼ばれる人達が日の光を浴びるまで。
黒人のホームレスの少年 裕福とはいえないキッチンカーの独身女性 捨てられた犬
マイノリティ側の人々は手を取り合い、不屈の精神で必死に這い上がる主人公を辛辣に描き さいごには僅かな希望を与える

真面目に生きていればなんかなるなんて絵空事で自分の正義を貫いた主人公がいつか成功を掴み幸福を手にするとはとても思い難い
それでも何処かで誰かが気に掛けてくれてそっと手を差し伸べてくれるかもしれない
先の理想を追い求めるよりも些細な繋がりを大切にしそばに居るものを大切にすることの尊さがこの映画から感じます

終始笑顔一つみせない主人公が刑務所でみせていた笑みが全てを物語っていますね
 裕福であること美人な彼女を持つこと恵まれた環境にいることがその人の幸せとは限らない

自分の中で大切な一本になりました
するとら

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