ハリ

ナイト・オン・ザ・プラネットのハリのネタバレレビュー・内容・結末

3.8

このレビューはネタバレを含みます

5つの都市で同じ夜を舞台にタクシーで起こる会話劇をオムニバス形式で描いている。

・ロサンゼルス
若いドライバーと女優をキャスティングする女性との交流。初めは若くてやんちゃそうな小娘に怪訝な態度を見せるが話すにつれて若いドライバーが類まれなる魅力に溢れている事に気付き女優の道を示す。

年の離れた2人だが女同士だからこその交流が生まれていく様が心地よかった。若くて背伸びして虚栄を張っているようだがしっかりと周りが見えており、将来に不安を抱え精一杯生きているドライバーの心境が良く伝わる。

・ニューヨーク
ニューヨークに来たばかりでたどたどしい英語と不慣れなオートマ車を運転する老人ドライバーと地元に帰りたい黒人男性の交流。不慣れな運転に業を煮やし黒人男性自ら運転。

目的地まで向かう間に身の上話や義理の妹の乱入、家族喧嘩に巻き込まれるドライバーだがなんだか嬉しそうなのが印象に残る。どんな事情があってタクシー運転手になったのだろうかという想像力を掻き立てられた。

・パリ
黒人差別を受けるタクシードライバーと盲目の女性との交流。最初は盲目の女性を好奇の目で見て質問するが、盲目の女性は一般人とはかけ離れた繊細さと本質を見抜く力があると感じある種の尊敬の眼差しに変わっていく。

人間の持つ最大限の感性に触れたお礼からか少しサービスした乗車賃を請求するがそれすらも見破られ「施しなんか受けたくない」と正規の料金を支払う。盲目女性を降ろした後ですぐに事故を起こしてしまい、目が見えないのか?という暴言を吐かれ、近くにいた盲目女性が不敵な笑みをこぼすという何とも言えない終わり方。

・ローマ
陽気かつ自己中なタクシードライバーと持病持ちの神父の交流。乱暴な運転と自分語りを続け、神父が持病発作を起こした事も気づかず神父を死なせてしまう。挙げ句ベンチに置き去りにして去る。ライフ・イズ・ビューティフルでも思ったが私は本当にイタリア色の強い場面は苦手。退屈でしょうが無かったし何度飛ばしたいと思ったか…。

・ヘルシンキ
人生最大の不幸に見舞われた男性ドライバーと人生最大の不幸があったと嘆く3人組の男性客の交流。

3人組の内へべれけ状態の一人は会社をクビになり離婚を突きつけられ人生最大の不幸だとドライバーに話すがドライバーは生まれたばかりの赤ちゃんを亡くすというそれ以上の不幸を背負っていた。酔いも相まって暴言や大きい態度でドライバーに接していたがその話を聞くと涙ながらにドライバーを慰めるようになる。大の大人3人が泣きながらタクシーに乗っているシーンは印象的。夜から朝に変わる余韻を感じられるラストシーンであった。

同じ夜を舞台に多種多様な人種が織り成す会話劇。今自分がこうしてる間にも何かドラマが生まれる瞬間や、笑い涙怒り悲しみの感情を持った人間の交流が生まれているのかなとしみじみ感じる映画であった。
個人的評価:良作
ハリ

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