えそじま

ウェンディ&ルーシーのえそじまのレビュー・感想・評価

ウェンディ&ルーシー(2008年製作の映画)
4.3
顔立ちの整った白人女性のどん底ホームレス生活という状況自体、起こりうる現実かといえばそうでもない気がするが、それは俺の狭い価値観のなかで起こりえないだけで、実際起こりうるんだろう。これが幼い子供であれば一般的な大人たちはなんとしてでも助けようとするのは当然だし、今ではそれが犬だったとしても、助けようとする人が多い。ところが大人となると、そこには自己責任という言葉がついてまわるので、よっぽどの聖人でもない限り助ける気にはならない。憐れみ、同情する余裕はあるが、手を差し伸べるほどの余裕はない。万引きすれば容赦なく捕まえるし、車が故障して困っていようが修理代はきっちり貰う。スーパーの敷地内に無断駐車していれば警備員は追い出す。みんな自分の生活に必死なのだから、別にそれが悪いわけじゃない。無関心だのなんだの責められるいわれはない。では精神が子供のまま身体だけ成長し、社会に迷い込んでしまった大人だった場合はどうだろうか。この作品では、ウェンディが漠然とした目的をやんわりと抱え、愛犬のルーシーと一緒にアラスカを目指す羽目になった原因そのものは語られない。何かの事件に対するウェンディの心境も、ラストの別れを除いてはほとんど正確に読み取れないようになっている。はっきりと分かるのは、演者のミシェル・ウィリアムズが、ずっと少年の顔をしていることだったように思う。
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