HidekiIshimoto

パリ、テキサスのHidekiIshimotoのレビュー・感想・評価

パリ、テキサス(1984年製作の映画)
5.0
ヴェンダースが撮影監督ロビーミューラーと組んだ作品はロードムービーの名作ばかり。これその極め付け。ロードとはもちろん荒野の中のロードであって、荒野とは全ての人の内にある荒野のことなので、ここに映る行ったこともないテキサスの荒野は懐かしい気がするし、自分もあの残酷なくらい深い青空の下を孤独に歩いた気もしてくるし、観入るうちに自分もこんなふうに愛に焼き尽くされたことがあったような気がしてきた。あったかもしれない。映画史に残るこのもう1人のトラビス。同じく孤独の十字架にかけられた不眠症のトラビス。は同じく愛で堕ちた女を救い出し、またロードに独り戻っていく。赤だらけの映像。こんなに赤が哀しく見える映画は他に思い付かない。