【詳述は『月蝕』欄で】山あいに眠る神秘、文明の利器の始源、ピュアに揺らぐ少年の心、周囲細部も含め、それら素朴で混ざりっけない真の力と、オリジナルで普遍の映画叙述素養と才は、『ミツバチのささやき』のシンプルも威容を引寄せる。梅次の下地再認識の名作然。

セリフが聞き取りづらくて往生したが、三太の真っすぐで希望に満ちた生き方を見せられると、訳もなく爽やかな気分になれた。こんな感情を抱くことは最近の邦画にはとんとないだけに、これはこれで評価されるべきだと思う。
そしてハモンドオルガンの突拍子もない音色がなんとも不思議な興趣を加えていて、これまた新鮮かつ前衛。
Morinaga号の街頭テレビに映し出された大相撲や美空ひばりの歌唱シーンを村人たちが食い入るように見入っているのもじつに楽しい。子どもたちにとって、戦後間もないこの時代には希望だけがいっぱいあった。