青乃雲

キサラギの青乃雲のレビュー・感想・評価

キサラギ(2007年製作の映画)
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小栗旬という役者を、いつもどこか信用せずに観たあとで、やっぱりいいな、上手いな、魅力があると思う。好きか嫌いかと尋ねられれば、嫌いと答える。けれど、主演した作品の彼をいつも大好きになる。

そして、役者冥利に尽きるというのは、きっとこうした感情を、いくつ芽生えさせるかによるのだろうと思う。また、こうした感情のレトリックを理解できないのが、ファン心理であることを思うと、本当にファンという存在は文字通り(fanatic:狂信者)のもののように思う。

この『キサラギ』に描かれている人物も、そのようなファンたちであり、三谷幸喜による『12人の優しい日本人』(中原俊監督, 1991年)の縮小版を観るようなところがあり、『十二人の怒れる男』(シドニー・ルメット監督, 1957年)を祖父に持つ感覚も併せて、楽しく観た。

そして、如月ミキという存在の空白性こそが、ファン心理の核心にはあることを、この映画は1つの皮肉(アイロニー)として描いていたように思う。
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