タクマ

キネマの天地のタクマのレビュー・感想・評価

キネマの天地(1986年製作の映画)
3.7
映画を愛する全ての人達へ届けこの思い。映画と人生よ繋がれ。
物語は昭和の初期蒲田撮影所。
活動写真が人々の最大の娯楽だったこの時代の頃。浅草の劇場で売り子をしていた小春が監督に見初められ女優になるも現実の厳しさにぶつかりながらも成長していくサクセスストーリー。日本中の人々が映画に夢と希望を抱いていた頃の熱量とあの頃の映画作りの裏側を描いた映画というジャンルの歴史を垣間見れる作品。ずっと松竹の監督として映画製作を続けてきた山田洋次監督作品ですから山田監督のこの時代の映画制作の現場に対する憧れや映画愛はみていてとても感じました。戦争の影が忍び寄り表現する事の自由も何かを知る楽しさも奪われる時代の中で映画とはすべての人々に平等に与えられるべき最高の娯楽という思いの元に映画作りをする登場人物達の姿に見ていて心が温かくなった。
役者陣で言えば有森也実さん演じる小春のルックスは良いし役者としての資質はあるけどまだまだ半人前っていうキャラクターも良いですけど個人的なMVPはやっぱり渥美清さん演じる小春のお父さんですかね。山田洋次監督作品だとやっぱり男はつらいよの影響が大きいのか見てるこっちからしたらまんま寅さんにしか見えないんですが映画を巡る人情喜劇としてはこの人の俳優としてのキャラクターは欠かせないと思いました。
中盤に出てくるある台詞は誰しもが抱えている映画への迷いを映画の台詞をかいして山田監督に直接問われたような感覚に教われこの数年間でみた映画の中で一番胸に刺さる台詞だった。正直あの言葉を聞いた所で自分の映画に対する考え方はすぐには変わらんけどあれは山田監督からの映画ファンに対する思いのこもった贈り物として受け取りたいと思う。映画と言う物は人に生きる希望を与えてくれる事を証明してくれた傑作だった。大好き。
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