チッコーネ

これは映画ではないのチッコーネのレビュー・感想・評価

これは映画ではない(2011年製作の映画)
4.0
圧政下でもなんとか撮ってやろう、というチャレンジ精神とユーモアが楽しい。
美しいインテリアの豪華マンションで、家族とトカゲと共に営む監督のイラニアン・アーバンライフの片鱗を覗き見れる。

ペルシャ絨毯の広がる一室をテープで区切りながら、最新の脚本を語る監督の表現力は北島マヤ並み、場面が充分に観えてくる。
虚しさを覚え進行を放棄し、ベランダで一服する監督の背中を揺さぶり、もっと続けてよと言いたくなった。
彼の監督術や培われた経験値をわかりやすく垣間見れるという意味では、貴重な記録。
また政教結合の時代錯誤を40年近く続けるイランで、表現に向かう監督と同志たちの絆も、強く感じられる。
そして監督は現在、収監の身だ。

撮れない要因は全く異なるが、キム・ギドクの『アリラン』と観比べてみるのも面白い。