YuukiImazu

第三の男のYuukiImazuのレビュー・感想・評価

第三の男(1949年製作の映画)
4.5
サスペンスの旨味が凝縮された傑作。友人の死の原因を探求するアメリカ人作家・ホリー・マーチンが、事件の鍵を握る“第三の男”を追う‥‥。

廃れながらも、格調高く気品のある第二次大戦後のウィーン。その風景や人物のクローズアップを、斜めに傾けて捉えた、平衡感覚のずれた映像が、美しい街並みに存在する闇や主人公が歪んだ世界に足を踏み入れているということが伝わる。

モノクロ映像が最大限に生きた光と影のコントラストの妙味、真実の究明にあたる主人公を翻弄し、脅かす効果的なシルエット。ミステリアスな雰囲気を際立たせる映像技巧の数々、演出、脚本の素晴らしさに唸らされる。不信感丸出しの事件関係者たちの存在も良い。

主人公と事件との間に絡むマーチンが好意を寄せる女の存在、徐々に明るみになる真実、主人公は複雑な状況に立たされていく。
彼の取る行動と決断の後に訪れるのは、これぞ「ハードボイルド‼︎」ってな、男の哀愁が素晴らしい名シーンである。
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