「出鼻から死を描く」という掟破りに始まって、末尾では何と彼らが旅に出るという掟破りで締め括られる。突如登場する暴力団やドラッグバイヤー、自主的な段ボールへの身投げ、無際限に増えていくヘロインなどなど極めてランダムなシナリオ。反復される事でそのおかしみを増してゆく。コメディとホラーの表裏一体感が最も不気味に現れている。生き生きとしながらも、死の気配で満ちた、渇いた運動の数々。ゴミ袋への突っ込みが驚く程にがらんとしている。大きく距離を取った引き画で、殺し合いをまるで遊びのように撮る。同じ引き画で遊びも撮る。軽快さと空疎さが完全に同線上に置かれている。無邪気な『ソナチネ』。シリーズ屈指の異質さ。ドラッグの価値の乱高下と完全な転倒はまるで『カリスマ』のそれ。
