なっこ

夕凪の街 桜の国のなっこのレビュー・感想・評価

夕凪の街 桜の国(2007年製作の映画)
2.8
良い映画というのは、見ている間心を揺さぶるものだけじゃない、
見終わった後も、何か違和感が残って、そのことについてしばらく考えさせられるものも私は良い映画だと思う。

美しい景色や俳優の演技に完成された美を見出すこともできる、
けれど明らかにセットで、俳優の演技も時代がかっていてけして滑らかに心に入り込んでくるものでなくても、その場面が台詞がいつまでも心に染み付いて抜けてはくれぬことがある、

そんな映画だった。

“伝えたい”、という思いは、そんなことを越えてくる。物語が本質的に持っている力が、そういうものを抜きにして直接語りかけてくるのだ。

この物語でいちばん伝えたかったことはなんだろう、そんな風に向き合った時に、最後に残ったものを私は大事にしたい。これは、そんな風に向き合う価値のある作品だったと思う。

“原爆は落ちたんやない、落とされたんよ”

その静かな怒りを、どう受け止めるのか。その痛みとどう向き合うのか。
その苦しみは、まだ終わっていない。
いや、終わりなどないのだ、始まりがどこだったのか、知ることもできないのに。

“死ねばいい”なんて気持ち、
他者へも自分へも持つべきものではないこと。そういう気持ちで真っ黒になった時に、どこかに救いがあって欲しい。
いや、なくてはならないのだ。そういう僅かな光を見出すために、映画はあって欲しい。
なっこ

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