クシーくん

地球最後の女 アイ・アム・ウーマン・オブ・レジェンドのクシーくんのネタバレレビュー・内容・結末

2.3

このレビューはネタバレを含みます

ロジャー・コーマンという人は手を変え品を変えこそするが同工異曲というべきか、芸風はどれも同じであると本作で実感した。

富豪だが綱渡り的な経営の為に、常に金銭トラブルが絶えないハロルドが、美人妻のイヴリンを連れ、プエルトリコでバカンスを楽しんでいた。
そこにハロルドの友人でもある顧問弁護士、マーティンがビジネス上の問題を解決する為にやってくる。ハロルドはマーティンにまるで取り合わず、イヴリンは傍若無人な夫ハロルドとの倦怠期に突入、マーティンを誘惑する始末。
冒頭から既に波乱を予期させる三人が、スキューバダイビングを楽しむ為に海に繰り出す。
ところが、三人が海から上がると船員は窒息死しており、酸素ボンベを外すと自分達も息苦しい事に気づく。空気中に酸素がないのだ。船のエンジンもマッチもつかず、仕方なく手漕ぎボートで酸素ボンベをつけたまま陸へ上がる三人。いつの間にか酸素は元通り空気中に戻っている。植物が光合成で酸素を作り出してくれたおかげだ。
やっとの思いでプエルトリコの街に戻ってくると、辺りは死体が散乱している。テレビやラジオも一切放送されていない。
彼らはようやく、自分達が地球最後の三人になってしまったことに気がついたのだった…。

いきなり酸素が空気中から消えた理由も不明なら、地球上から一瞬にして消え去った酸素が植物の光合成で戻った?とする理屈も意味不明だが、酸素ボンベさえ持っていれば助かるとする理屈なら、まだ地球上に何人かは生き残っていそうな気がするが、考えるだけ馬鹿馬鹿しいのでやめた。

地球滅亡、という壮大なテーマな割にはあからさまな低予算ぶりが画面からビシビシ伝わってくるシビアな映画。
荒唐無稽でも最初のアイデア自体は悪くなかったのだが、如何せん低予算故にダラダラした男女の三角関係で引き伸ばし続け、最後は破綻するという、折角の終末世界を描いた話なのに妙にこじんまりした所に終結してしまっているのが実に退屈。

マーティンがおかしくなってしまうくだりは他のコーマン映画の定石とも言うべき展開で、流石に食傷気味になってきた。
正直ハロルドが他の二人と比べて大分まともな人物なので、本作でエゴイストのように描かれているのも説得力が希薄、一切感情移入出来ない三人の間の痴情の縺れを延々と見せられるのは苦痛である。
ただ、プエルトリコの美しい街並みや史跡のロケは良かったかな。本作で良い点といえばそれくらいしかない。

そもそも本作がプエルトリコで撮影された理由自体が、地域活性化の為、当地で撮影される映画に対して税制上の優遇措置を取っていたらしく、これを逃す手はない我らがコーマン監督がキャスト・スタッフを引き連れロケを敢行、なんとその時にほとんど同じキャストを使って三本の映画を取ってしまったというから呆れるを通り越して感心する他ない。
これらは「プエルトリコ三部作」と斯界で呼ばれるそうだが、残りの2作を機会があれば観たいような、観たくないような、そんな思いである。

メインキャスト三人の内、ハロルド(アントニー・カーボーン)は低予算映画おなじみの俳優で、コーマン監督のヒット作「血のバケツ」にも出演、イヴリン(ベッツィ・ジョーンズ・モーランド)も一部ビッグタイトルのマイナーロールに名前が出ている他は全てB級映画ばかり、二人にとっては本作が唯一と言っていい主演作のようだ。
狂った弁護士マーティンを演じるのは後の名脚本家ロバート・タウン。演技の方はヘロヘロ。本作の脚本も担当しており、こちらもお粗末という他ないが、コーマンの元で下積み経験を経て、後に「チャイナタウン」や「MIP」の脚本を書いて大成する。俳優業に行かなくて本当良かったね。
まあ元々俳優になるというより脚本志望で、わざわざエド・ウェイン名義で出演しているのは人件費を抑える為だとか。実にコーマンらしい。
クシーくん

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