クシーくん

フォーゲルエート城のクシーくんのネタバレレビュー・内容・結末

フォーゲルエート城(1921年製作の映画)
3.4

このレビューはネタバレを含みます

色々ヘンな映画。

舞台は19世紀、山と森に囲まれたフォーゲルエート城。城主フォーゲルシュレイ卿の主催で狩猟が行われ、友人達が招待されていた。
あいにくの雨天の為、城内で歓談していた所予期せぬ人物、エーチュ伯爵が訪れる。実の弟ペーター殺しで起訴され、無罪になった物の、財産を独り占めせんが為の殺人疑惑が未だ絶えない曲者である。
招かれざる客の思わぬ来訪に当惑する城主夫妻。亡くなったペーターの未亡人で、現在はサフェルシュタット男爵と再婚した男爵夫人も招待しているからだ。
エーチュが来ている事を知った男爵夫妻は恐慌をきたし、すぐに帰ろうとするが、男爵夫人が心から信頼している亡夫の友人、ファラムンド神父もローマから招かれている事を知らされ、神父が到着するまでは屋敷に滞在することに決めた。数日後、屋敷を訪れた神父に男爵夫人は衝撃の告解をする…という話。

種を明かしてしまえばなんという事はない、ホラーではなくミステリーなのだが、英題の「The Haunted Castle」という名前も似つかわしいほどにゴシックで陰鬱な雰囲気を漂わせる。ライオン狩りを自慢していた臆病な男が悪夢に悩まされるくだりがあるかと思えば、キッチンで見習いをしている少年が見る楽しい夢のくだりは急にゆるゆるコメディ。重い流れの中でいきなりギャグ挟んできてビビる。

「カリガリ博士」の美術セットを担当したというヘルマン・ヴァルムが城の外観及び内装を手掛けているらしく、おそらく一番有名であろう、サフェルシュタット夫妻が広間に左右対称になってるショットはじめ表現主義的美術と演出が素晴らしい。導線が特殊な段差階段と広々とした天井、美しい縦の画が多い。

演技の面でも、サイレント映画はサイレントである性質上、派手な表情、動きをする作品が多い中で、本作の主役とも言うべきエーチュ伯爵を演じるロータル・メーネルトはポーカーフェイスな表情を僅かに変える事で話をしっかり動かしてるのが凄い。

プロットは冷静に思い返すと大分無理があるんだけど、そうした演出とミステリアスな仄めかし全振りで上手く乗り切ってる感ある。夫が聖性に目覚めたから妻が悪の道に走るというのも極端過ぎて苦しい。

変装と入れ替わりトリック古典的過ぎて、江戸川乱歩かよ。明智小五郎かよって。まあ実際乱歩より古いんだけど。当時の観客は大真面目に驚いたのかな。驚いたんだろうな。
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