ジジイ

女系家族のジジイのレビュー・感想・評価

女系家族(1963年製作の映画)
4.0
米倉涼子のテレビ版も悪くなかったのだが、映画はそれを凌ぐ面白さだった。大阪船場の老舗木綿問屋の当主が亡くなり、残された三姉妹の間で熾烈な遺産相続争いが起こるが、意外な人物の存在が明らかとなり…という物語。キャストは京マチ子、若尾文子、中村鴈治郎、田宮二郎ほか。何がすごいと言って財産分与にまつわる専門的なディテールがこれでもかと繰り出されることである。山崎豊子の原作が如何に綿密なリサーチに裏付けられているのかが伺えて唸ってしまった。







以下ネタバレです。







愛人、若尾文子への虐待がえげつない。妊娠を見破った浪花千栄子が文乃の羽織を剥ぎ取るシーン。文乃の家に大勢で乗り込み無理矢理、産科医に身体を検めさせるシーン。さすがに殺人は起こらないが、三姉妹、相続争い、愛人虐待という共通点で「犬神家の一族」を思い出した。執念の京マチ子が山林を見に行くくだりには、さすがに笑ってしまった。少しずつ強かさを滲ませる文乃の、ラストの啖呵の切り方がカッコいい。憑き物が落ちたように脱力する三姉妹の姿も印象的だった。ただ、男系復活万歳みたいな意識はそれはそれでおかしい気もする。この場合、男社会が当たり前の世の中にあって初めて女系が目立っているだけであって、どちらであろうとお互いを尊重し合うのが、本来あるべき姿ではないか。
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