星降る夜にあの場所で

牢獄の星降る夜にあの場所でのレビュー・感想・評価

牢獄(1949年製作の映画)
4.4
本作品は紛れもなくベルイマンのターニングポイント。
定着しているベルイマン節が静かに炸裂しています。

脚本も当時としては凝った内容ではないでしょうか。

映画監督をしている教え子にこんな映画はどうだろう?と自ら考えた構想を話に来る元教師。
その問いかけがまずベルイマン的なのです。

本作品でも彼の真骨頂である幻想的な夢のシークエンスが登場し、初期作品の中で最も形而上学的な作風になっていて、所謂難解と言われるベルイマン作品の片鱗が見て取れます。
またベルイマンが手作りした往年のトリックフィルムへの洒落たオマージュシーンも観ることができます。

ベルイマンは作品を通して、生き地獄とどう対峙していけば良いのかを問いかけてきます。
そこから逃げ出すには自ら命を絶つしか方法はないのか?
追いつめられた時に、もう一度立ち止まってこれからの人生の未来予想図を描いてみる。
そこにかすかにでも光が見えるのならば、まだまだ生きてみる価値はある。
その時、迷宮のような牢獄の鍵を見つけることが出来るだろう…

そして、逆に
さぁ~神様!
あなたは私にどう関わってくるおつもりですか?
な~んて聞いてみるのはどうだろうか。
そのくらいの精神的ゆとりがなければ、鍵を見つけられても脱獄するのは難しいのかもしれません…

なんであれ本作は不条理な世界での絶望を描いているという点において、ベルイマン作品を紐解く上では非常に重要な作品であると思います。