警察学校卒業直後に極悪マフィア、コステロへのアンダーカバーとして身分を抹消し潜り込むこととなるビリー。わざわざ暴力事件を起こして刑務所に入るなど、その身分偽装は徹底している。
一方、コリンは幼少期からコステロによる経済的庇護のもとで育つ。刑事となりどんどん出世をするものの、マフィア側の内通者としてコソコソと警察の内情をコステロにリークし続けていた。彼の如才ない感じは割と鼻につく。
ビリー&コリン双方のバレる?バレない??をヒリッヒリの緊張感をもって、とびきりのエンターテイメントとして仕立て上げる。香港の名作『インファナルアフェア』のリメイクのようですがそちらも未見です。
スコセッシ監督は『グッドフェローズ』も『ウルフオブ』もそうなんですが、前後半で緩急をググッと効かせる印象があります。今作は、ビリーがコリンを追っかける映画館はじまりのシークエンスから明らかにギアチェンジしており、そこからは完全に画面に釘づけ。少々説明不足に感じる前半が退屈だとしても、そこまでは我慢して欲しい。
緩急演出は、前述した作品だと、だらだらとした日常を丁々発止の会話劇で愉快に描写することでキャラへの愛着を生む効果があったんですが、今作は正直前半にそこまでの痛快さはありません。お得意のモノローグとスピード感ある演出を使って、もう少しスリム化しエンタメに徹底することも、もちろんできたでしょう。
でもあえて、ビリーのつらすぎる潜入パートとコリンが調子良く出世する様を1時間ほどじっくり描ききる。さらには、ノイローゼ気味なビリーの唯一の拠り所セラピスト、兼コリンのフィアンセとして1人の女性キャラも登場し、ビリー圧倒的不利の不思議な三角関係まで見せてくれます。
結果的に、監督作品にしてはいつになく片方=ビリーへの肩入れ感情移入が生まれるようになっている気がしました。コリンにも、コステロの「擬似的な父」という呪縛に同情の余地はありそうですが、まあ権力に溺れていそうな感じはありましたしね。
終盤、女性がらみで発生する「あれ?これはどっちなのか??」についても解釈の余地はありますが、最後まで実存を求め奮闘していたビリーであって欲しいと、切に願う。
なんにせよ個人的には、自信をもって大好きなディカプリオの肩を持つことができる作品にようやく出会えて嬉しい。ああ見えてレオ様って真正面から推せるキャラを意外とやってないんです。『華麗なるギャツビー』とか賛否両論ですよね。私は大好きなんですが。
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噂ではリメイク元の『インファナルアフェア』も大傑作とのことで今からわくわくしてます。「イタリア系?アイルランド系?などの移民文化」「州警察とFBIの軋轢」などアメリカンなモチーフも作品のキーとして多々ありましたので、どうなっているのか香港版や日本版と比較するのが楽しみ。
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*後日鑑賞した『インファナルアフェア』のレビュー*
https://filmarks.com/movies/2709/reviews/176598234