いくた

悪人のいくたのレビュー・感想・評価

悪人(2010年製作の映画)
4.1
●殺人犯との逃避行

李相日らしい、鬼気迫る演技と心打たれるストーリーだった。

▶感想
物事の二面性

『悪人』というタイトルが秀逸。大多数の人には悪人でも、別の視点から見たら悪人ではない。

是枝監督の『怪物』に影響与えてるであろう、物事の二面性と、それを取り巻く人物たちの深い感情が引き出され、苦しくてたまらない作品だった。

これを観ると、何事も風の噂や評判ではなく、自分の目や経験を通じて判断できる人間でありたいと思える。

初めて死ぬほど愛した人が殺人犯だったら、自分はどうするだろうと、あまりにも感情移入の余地があって、終盤は光代に心をもっていかれた。

そして、主人公雄一の最後の行動も、愛ゆえの行為と考えると辛い。

樹木希林の演技もすごくよかった。バス運転手との一幕は印象的で、深々とお辞儀する姿に心中の苦しさが表現されていて辛くなった。

多くの愛が潜むからこそ、それだけ苦しさが生まれる、辛いの一言では言い切れない人間らしさ。とにかく人間味溢れる傑作でした。
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