くろまめ

悪人のくろまめのレビュー・感想・評価

悪人(2010年製作の映画)
3.0
『 悪人』ってなんだろう?
それを改めて考えさせられる作品だった。


『 悪人』の意味調べてみた。
・心の良くない人
・悪事を働く人

これって妻夫木当てはまるのかな?
でも『 殺人』は悪事に当てはまるから、やっぱりそう呼んでいいのかも…



私には、罪悪感も哀れみも無く、亡くなった満島ひかりを笑える岡田将生や、純粋に慕っていた樹木希林から泣け無しのお金を巻き上げる松尾スズキの方が『 悪人』に見えた。



でも、妻夫木が善人か?とも思わない。
もっとやり方はあったはずだし、逃げてしまった時点で、善人とは呼べない。
善も悪も兼ね備えている普通の人だと思う。




保険金殺人や、強盗殺人だと悪で、介護疲れによる殺人だと同情する。
戦争だと倒した敵が多ければヒーローになれる。
じゃあ妻夫木がした殺人は?
同じ人を殺すという行為が見方や状況によって変わる。
殺人を正当化出来ないけど、結果だけで判断するのはすっごく難しい。



柄本明が語った言葉が頭に残って離れない。
「大切な人がいない人間が多過ぎる」私はどうなんだろう?と考えてしまった。




満島ひかりはかなり自己中で、プライドが高い嫌なタイプの子だったけど、殺される程では無かった。
その子を大切に思う人がいたのに、もっと年齢を重ねて素敵な女性になったかもしれないのに、全てが失われた。
それって凄く重大な事だ。



妻夫木は、普段は真面目に仕事して、介護も手伝って、でも誰とも分かり合えず孤独が募っていた。
そんな中で同じ孤独を持った深津絵里と出会って、大切な人が出来て初めて自分のした事の重大さに気付く。


ひとりの人間の人生を奪った。
その人に関わる人の幸せを奪った。
自分や自分の大切な人の幸せを奪った。
人を殺すってそういう事なんだ。と、改めて気付かされた。



終始博多弁?熊本弁?で話すので、方言がすごく素敵だなと思った。
より、何でもない生活の中で起った事件なんだと実感が湧きやすかった。
地元の人は方言が違う!とかイライラしなかったかな?




ラストは色んな捉え方があると思ったけど、深津絵里は改めて妻夫木の事を客観的に見れる様になった。
でも本当の妻夫木を知っているから、世間でどんなに言われても、やっぱり嫌いになれないんじゃないかな。
あの一緒に過ごした日や、あの灯台から見た夕日は嘘じゃなかったし。



妻夫木が何処にでもいる金髪ヤンキー風で、乗ってる車は車高短だし、仕事は解体だしで、テンプレなキャラだったのがちょっとウケた。



樹木希林の演技力に改めて感心したし、松尾スズキもハマり役だった。
李監督って、人の気持ちの変化や、思いを表すの上手で好きだなー。


善悪の価値観は人それぞれだけど、自分の固定観念や、メディアで流された情報だけで決めつけるのは良くないと、考えさせられる作品だった。
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