KnightsofOdessa

太陽が目にしみるのKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

太陽が目にしみる(1965年製作の映画)
3.0
[女たらしメイソンが最高] 60点

またバカがカルデアに行くのか。というガソリンスタンド店員の言葉とともに、ジョルジュ・ドルリューの軽快な音楽が鳴り始め、画面の色が目まぐるしく入れ替わる中々に洒落たオープニングがまず目を引く。このカルデアに向かう"バカ"がパリの喧騒から逃れてきた画家のヴァンサンである。彼はこの地で自堕落な生活を送る小説家レニエと再会し、その9歳の息子ダニエルと親しくなる。レニエを含めたカダケスの男たちは、バーの女主人ジェニーに夢中で、ヴァンサンもそのうちの一人となる。大人たちの陰鬱な世界と物静かに燃え盛るロマンスの裏側では、駆け落ちを誓いあうような内外に燃え上がる恋を育む一組の若者がおり、二つの世界は徐々にすり替わっていく。これらが対比されればされるほどに、ジェニーとヴァンサンの艶めかしい視線の視線の絡み合いが強調される。

女たらしのレニエを演じるのは私の大好きなジェームズ・メイソン。彼が嬉しそうにだらしない生活をしているのには、こちらまで嬉しくなってしまうから不思議だ(これが推しの魔力か)。もっと彼に注目してくれてもいいと思うんだが、あまりにもテンプレな若者たちの恋愛(これにはダニエルが関与している)に時間を割くせいで、鼻血出そうなほど濃い大人たちの恋愛の時間が減ってしまったのは非常に残念。逆にジェニー、ヴァンサン、レニエの三角関係は無限に観てられる。

1965年のカンヌ映画祭は本作品を含めて26本あって、鑑賞したのはまだ7本だが、中々レベルが高い。ちなみに、岸惠子がノラという名前で自殺未遂を起こす若い女性役で出演している。
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