YusukeHorimoto

誰も知らないのYusukeHorimotoのレビュー・感想・評価

誰も知らない(2004年製作の映画)
4.2
⭕️初見

第47回ブルーリボン賞作品賞受賞、2004年度キネマ旬報ベストテン1位獲得、是枝裕和監督作品ということで鑑賞。

これは総じて凄い映画でした…。

◼️ドキュメンタリータッチのカメラアングルや役者陣の演技が凄い。(実話を元にしているということもある)

終始この点には圧倒されます。

何と言っても、親がいなくなってしまった子供たちの生活を描いている作品なので、主に子供たちの演技のみで進行していくという面があります。
これは、主格をそこに置く難しさを汲み取った上で観ると本当に素晴らしいです。

これには、子供たちには台本を渡さず、その場の指示だけで演技をさせていたという、是枝監督のアプローチがこれ以上にない程のリアリティを演出したのだと感じさせられました。
表情やセリフは常にアドリブなの?って思うくらいの空気感が漂っていて、本当に凄いパワーを持っている映画だと思います。

もちろん、カメラアングルや色味もそれを助長させているのですが、日常を映すといった面で、何度も同じ階段の同じアングルから上り下りするカットを使ったり、商店街を歩くシーンも俯瞰で同じような絵を使ったりなど、細かな演出も非常の優れているので、シンプルに凄くて、面白かった。

◼️脚本面

この作品の落とし所って、どう考えても最後は子供たちが保護されるんでしょって感じなのだけど、そうじゃない。これが個人的には凄いと思ったポイントだったかも。

これには、全体を通して伝わってくるこの映画の“重要な何か”を感じました。これってもう一般の次元じゃないところにメッセージ性あるまである。

四季の表現は突飛なものはないですが、わかりやすく日付けを映すなどをしなくても、ここまで季節感を演出しているのは凄いなぁと思いました。

情景の描写は、敢えて余計にせず「偶然その日は雨が降っていた」「偶然その日は猛暑日だった」といったような感じで、これもまた凄ポイント爆上げしてました。

後、小さなピアノや子供の絵が多くインサートとして組み込まれているところにも芸術的なものを感じました。
特に軽い音が鳴るピアノからは、儚く消えるサスティンに、時間的な経過の虚しさを感じて、胸が締め付けられるような気持ちにさせられました。

◼️総括

本当に凄いパワーを持っている映画でした。

ヴェネツィア国際映画祭にて主演男優賞を史上最年少で獲得した柳楽優弥の演技は日本が誇るものがありますし、ちょい役で顔を出す豪華俳優陣の演技も含め、総合評価はかなり高め。

重たいように感じますが、実はソフトなタッチの演出も多く、基本的には軽快なBGMばかり起用されているという面もあって、良くできている映画だなぁと感じます。

一度は観ておいて損のない映画です。

《好きなシーン》

苦しい生活をしている中で、公園の土を持ってきてカップ麺の空いた容器で植物を育て始めるのですが、その容器に名前を書くシーン。
主人公で長男の明が、まだ幼い末っ子のみきの手を握って一緒に名前を書いてあげるところにはグッときました。とても暖かさの詰まった素敵なシーンだった。
YusukeHorimoto

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