アヤナ

誰も知らないのアヤナのネタバレレビュー・内容・結末

誰も知らない(2004年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

1988年の巣鴨置き去り事件をモチーフに作られた映画。

柳楽優弥演じる長男アキラが魅力的で、惹き込まれる。妹や弟の父親に対して見せるはにかんだような表情も、遊び友達に見せる無邪気な少年の顔も、弟妹たちに見せる兄の顔も、どれもがとても自然体だ。

他の子たちも自然体でいい。弟のシゲルのちゃらけた感じにはヒヤヒヤさせられた。

子どもたちは未熟な母親によって社会の外側に置かれる。学校も行かせず、住んでいることも隠している。社会的にも法的にも虐待だと言っても良いだろう。
しかし、そんな異様な日常の中で、この母親がこれまで子どもたちと楽しく時間を過ごしてきたであろうことが、食事中や髪を切るときのやりとりでわかる。子どもたちに好かれてもいる。
社会の外側においては、けして酷い母親ではないのだ。

その母が新しい恋人を作って家を出たところから、子どもたち4人の生活がはじまる。
悲惨な結末を迎えるに違いないその生活は、明るいBGMに彩られて無邪気に笑い合って、まるで楽園のようである。
だが長男アキラは気づいている。社会の外側では生き伸びられないのだと。
だけど、社会に出てバラバラに生きて行くこともできない。自分たちはずっと外側で寄り添って生きてきた。
その狭間でお金の計算をするアキラの姿が悲しい。

実際の事件では、長男の遊び友達が泣き止まない末の妹に腹を立て、押し入れの上から何度も妹の上に飛び降りるなどして殺してしまったという。この映画の中で妹はたしかに死んでしまうのだが、そのような死に方はしない。

この映画が描いたのは実際の事件の残酷さだけではないだろう。
「誰も知らない」外側や狭間で生きる人間の姿に光を当てている。
アヤナ

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