たろ

誰も知らないのたろのレビュー・感想・評価

誰も知らない(2004年製作の映画)
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子どもの演技がすごい
台詞を喋っているわざとらしさがほとんどなくて、特に下の子たちは本当の兄弟や友達同士を連れて来ているのか、はたまた上の子だけ台詞言わせて、下の子は台詞なしで素で反応させてるんじゃないかと色々想像してしまった。どういう指導すればこうなるんだ。
映像がずっと美しい。フィルムの美しさと陰影の使い方のうまさで、長男の抱える孤独感や重圧が際立つ。凄惨さを強調した粘質なヘビーさはないが、絶対に続けられるはずのない生活を救いがないことがわかりつつもそれでもなんとか続けようとする途方のなさが苦しい。
主人公の魂が高潔だったな。
友達ができて兄弟をないがしろにするの、世間の兄弟間では割とあることだと思うが、主人公の置かれた環境下だと必要以上に意味が重い。そんなものを12歳の子供に背負わせるな。
12歳の子供が9万円ちょっとの家賃をATMで振り込む姿は恐ろしい。
崩壊寸前の生活なのに、兄弟全員が揃っているせいか、不思議な無邪気さと朗らかさもある。督促状の裏にクレヨンで描かれた絵、子どもだけで生活している狂気のアンバランスさが象徴されてて好きだ。
母親が子どもに対して愛情がないわけでなく、憎悪から捨てるわけではないため、虚無感というか主人公に少しづつ降り積もる諦念が強く伝わってくる。愛情といっても、愛玩動物に対するような態度に見える。愛情を与えているのではなく可愛がっているだけだ。父親に似てきたと言って、自活能力のある対等な存在かのように扱い、友達のように話しかけ、放置する。子どものことを、大人である自分と対等に扱っているのではなく、大人の自覚がなく、自分自身を子どもと対等に扱ってしまっている。
たろ

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