masayaan

誰も知らないのmasayaanのレビュー・感想・評価

誰も知らない(2004年製作の映画)
4.6
作品の冒頭、何事かがこの少年の身に起きたのだということが暗示される電車内での短いシークエンスが、冷ややかな夜景と映画のタイトルとの静かなオーバーラップで終わっていく時、果たしてこれから流れる140分の物語を自分に受け止めることができるのだろうかと誰しもが脅される。なぜなら、この映画は、少年がこの襟元の破れたボロボロのTシャツを纏い、電車に乗った時に終わり、しかもその時、明らかにただ事ではないことが「誰にも知られずに」起こらなければならないことを知らされるのだから。

YOUの演じる無責任な母親には、ひとまずひとつの罪も問わずにおこう。子どもたちをささやかながらに援助するため、クタクタの5千円札をいかにも惜しそうに手渡す父親たちも同様である。むしろ、作品の序盤、母がほろ酔い・上機嫌で真夜中に帰宅し、新たな恋人にもらった寿司を振る舞うために4人の子どもを叩き起こし、父親に似てきたという長男を元カレでも眺めるような目つきでウットリと眺める場面には言い知れぬ狂気がひた走っている。これが映画的にはハイライトの一つなのだから笑えない。

ああ、なんて言うか、これをここまで後回しにしてしまって悔やまれます。新作も楽しみ。
masayaan

masayaan