あそう

誰も知らないのあそうのネタバレレビュー・内容・結末

誰も知らない(2004年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

だれも救われない。これがほんとにあった事件を題材にしているのも、こんなことが日常茶飯事なことにもやるせなさが増す。
キャリーケースで引っ越して来た妹はキャリーケースが棺になってしまった。最初に入っていたキャリーケースには入らなくて、一つ大きいキャリーケースに入れられたことや、柳楽優弥が声変わりしてたのも時間の経過と子どもの成長を感じさせられた。
植物を育てるため、生きるために使われた土は死体を埋める時に使われて生と死は隣り合わせであることが土を触るということで印象的に描かれていた。
「漂流生活」っていう表現の仕方が秀逸だと思う。家族としては異質であったけど家、食べ物もお風呂もあったし、洗濯もできて幸せな家族、人として生活できていた。それが家賃は払えなくなり、水道電気は止められ、ご飯も毎日食べれない、服は汚れ、身体は黒ずみ、クレヨンはどんどん短くなり、お絵かきの紙は督促状になった。家がどんどん荒廃していく描写によって不思議と無人島に見えてくる。その中で子どもたちはその日を一生懸命生きる様は言葉通りだ。
水が長男の感情を表しているのかなと思った。弟妹たちの世話が嫌になって外を出て行く時も飲料水として汲んできた公園の水を弟が水やりでばしゃばしゃ使っていたり、感情の爆発を表しているのかなと思った。最初のシーンでお風呂の排水溝に水がちょろちょろと流れていたところからもうらそこからお兄ちゃんの疑問や不満、ストレスが漏れ出していたのかなと思った。
誰も知らない、いや知らなかったのか。みんな知らないふり、見ないふりしているだけでほんとは知っているのではないかという是枝監督の問いかけを忘れてはいけない。
あそう

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