りょうすけ

許されざる者のりょうすけのレビュー・感想・評価

許されざる者(1992年製作の映画)
3.8
「許されざる者」

第65回アカデミー賞にて作品賞を受賞したクリント・イーストウッド監督・主演の西部劇。荒くれ者に顔を切り裂かれた娼婦の無念を晴らすために、伝説のアウトローが復讐にやってくるという物語。2013年に日本でリメイクされており、そちらは公開当時劇場で鑑賞していたが、オリジナルである本作は未鑑賞であったため鑑賞。

物語自体は、賞金稼ぎや悪に染まった保安官や町の住人、女が受けた屈辱への敵討など西部劇にありがちな要素で構成されていることと日本リメイク版を観ていることもあってか、あまり新鮮さは感じなかったが、映像がとにかく美しいところに魅力を感じた。

夕焼けをバックに2頭の馬が並走して歩くシーンや遠くから馬に乗ってくる人物のシーンなど引で撮られたシーンも素晴らしいが、目の前にいる人物を映し出すシーンも考えられて撮られている。顔を傷つけられた娼婦とイーストウッド演じるマニーが初対面するシーンは、映像的な見せ場では決してないはずなのに不思議と魅力を感じてしまう。

また、主人公が過去に女子供でも問答無用に殺していたアウトローという設定が良かった。妻との出会いで改心したことに加えて、年を取ったことにより落ち着きを得たマニーの哀愁漂う雰囲気が最高に渋くてクールだった。この当時、イーストウッドは63歳。脂も乗り切って元来の渋さがより顕著になっていた時期。ラストの酒場でのダークヒーロー感はこの当時のイーストウッドにしか出せないものだろう。

文字でしか登場しないマニーの妻にだけが分かっていた彼の魅力を、観客は映画を観ることによって気づくことができる演出になっているところもまた好きだった。本当に何から何までカッコ良すぎる映画だ。
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