福福吉吉

イースタン・プロミスの福福吉吉のレビュー・感想・評価

イースタン・プロミス(2007年製作の映画)
4.0
助産婦のアンナの勤めるロンドンの病院にロシア人少女が運び込まれた。少女は妊娠しており、出産後に息を引き取る。アンナは少女の所持品の中に日記を発見し、彼女の身元を調べ始める。しかし、少女の妊娠にはロシアン・マフィアが深く関わっており、アンナはロシアン・マフィアの一員のニコライに出会ってしまう。

薄暗い質感の映像でロシアン・マフィアと一人の助産婦のストーリーが交錯しており、どこか冷たい感じを受けました。狂ったロシアン・マフィアの世界と、ただ生まれた子供を心配した助産婦の世界は対照的で、観ていて常にアンナが心配になる不安を感じ続けました。

ロシアン・マフィアの「運転手」としか名乗らないニコライ(ヴィゴ・モーテンセン)は、マフィアの跡取りのキリル(ヴァンサン・カッセル)の付き人なのですが、常に冷静でキリルをきちんと立てる人物で、優秀に見えました。ニコライは少女の件でアンナと接触するのですが、マフィアらしい冷徹さと一般人としての温かみを併せて感じる不思議な人物でした。

アンナ(ナオミ・ワッツ)はバイクを乗り回し、マフィア相手でも気後れしない肝の据わったところがあり、身元を探るため、独自で少女の日記を読み始めます。これが非常に危なっかしくて観ていてヒヤヒヤしました。アンナはマフィアと接触することになりますが、それでも少女のことを第一に考えているように見えて、強い人間だと思いました。

そしてマフィアの跡取りのキリルが非常に狂っていて良かった。大口をたたき、空気が読めない駄目っぷりがキリルの姿から滲み出ていて、ヴァンサン・カッセルの演技の上手さを感じました。

後半にニコライの格闘アクションがありますが、これが見応えがあり、カッコ良いです。ストーリーの経緯からニコライにとってかなりの危機的状況でしたが、見事に跳ね返す姿は感服するしかありませんでした。

とても重い作品なんですが、ニコライの得体の知れなさとアンナの気持ちの強さに引っ張られて、最後まで集中して観ることができました。
本当に観て良かったと思います。

鑑賞日:2023年5月22日
鑑賞方法:U-NEXT
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