まぐろさばお

イースタン・プロミスのまぐろさばおのレビュー・感想・評価

イースタン・プロミス(2007年製作の映画)
4.8
前作ヒストリー・オブ・バイオレンスでは40年代フィルムノワール「殺人者」、しかも漆黒の世界をかなり忠実に再現してきたが、こちらはより暗黒街に入り込んでマフィアもの。

通常マフィアものといえば義理人情ファミリーとその裏切りなんかを描くが、同じ血の物語を描きつつこちらはより国際色が豊か。
設定ロシアンマフィアとのことだが、ロマの女性に恋をする「黒い瞳」のジプシー曲を謡っているところからも、おそらくロシアンといっても混血か、周辺国出身のマフィアと思われる。下っ端にはクルド、売春婦はウクレイン、アンナはイギリスとロシア混血、元カレは黒人、報復者はチェチェン系、モーテンセンはFSBと、そして何より舞台が彼らにとって異国のイギリスロンドンであると、ソ連崩壊後の各民族の生きづらさや故郷を追われた悲しさも漂ってくるのが凡百のマフィアものとの違いだろう。こうした東欧系の生きづらい民族的な悲しみこそがイースタンプロミスだったのかもしれない。
ハワードショアの楽曲は上質で重々しく、アクションはモダンな装飾を廃しとてもソリッドで唐突な残虐性がとてもいい、セリフも抑制的ながら鋭く素晴らしい出来の映画だ。