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モダン・タイムスのuuukyeeのレビュー・感想・評価

モダン・タイムス(1936年製作の映画)
5.0
仕事が繁忙期を迎え、活字。
本をいただく機会が多く仕事を離れても、活字。
自分でも買ってしまい家でも、活字。
かなり久しぶりの動くお話。映画作品はご存知チャップリン作品。
"Modern Times"です。

基本的には産業革命後の資本主義、機会文明に対する風刺を匂わせる世界観が中心です。
働かされる事で人間としての本質を失い、機会の一部の様に成り下がってしまった、所謂”社会の歯ぐるま”の姿を皮肉する様な作品となっております。そして、この”はぐるま”を連想させる演出が非常に多く、それらを一つ一つ丁寧に、チャップリンが胸ぐらを掴んで笑い飛ばして行きます。
この、社会風刺を飄々とかわし独特の表現法を用いコメディタッチに変えて、その2つを対極のところへ持って行き作品全体を全く暗く重い空気にさせないのが、この作品だけではなくチャップリン映画の真骨頂なんですよね。

そして、始まってからはもう名シーンのオンパレードです。この映画、個人的には他のチャップリン作品よりコメディ要素が強めで、随所に笑いがある様に思います。
最初のネジ締めのシーンに始まり、自動飯食い機のシーン、天国を見つけるシーン、デパードでのローラースケートや留置所でのやり取り、そして言わずと知れたSMILEや、チャップリンの天才たる所以が存分に発揮されている即興のTitina。気になって調べましたが、あの歌詞はあえてこの世に存在しない言葉を使い、世界中の誰が観ても楽しめるようにしたかったとの想いが込められているそうです。
そしてエンディングシーンの二つの影、二人の歩み。全編を通し名言と呼べるものはこの作品、そんなに多くはありませんが(コメディ要素が強すぎて笑)、ラストのほんの10秒くらいのやり取りは、まさにチャップリンが表現者であるべき所以が伝わってくる様で、全てが希望で満たされます。こんなに幸せな気持ちはありません。

いや、ここまで書いてきましたが、凄すぎて観終わった後に感動するレベルですこの映画。僭越ながらエンディングシーンにもう少し触れます。

冒頭で、現代資本主義への批判の映画だと書きましたが、最後のシーンを観るとまた別のメッセージがある事を感じさせてくれるんです。散々笑い飛ばしてきた現代社会を人間らしさを見失わずに皮肉したり野次ったりしながら、上手くいかないこともあるけれど、厳しい社会から逃げずに正面から立ち向かって人生を歩んで行こうと、そんな2人への人間賛歌としてのメッセージになっておるような気がします。批判ばかりしても、一文無しになってしまう。かと言って、社会の歯車として働き続けていると狂乱してしまう。そんな社会を笑って歩いて行こうと。

そして最後の1秒、2人の前に続く長い道が、スクリーンに向き合う自分たちにも続いている道であるという事に気付き、感動の涙と共に卒倒しました。文句なしの傑作です。

"What's the use of trying?..."
"Back up! never say die we'll get along!"
uuukyee

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