浦切三語

マンダレイの浦切三語のレビュー・感想・評価

マンダレイ(2005年製作の映画)
3.5
すんげぇ皮肉まみれの映画。絵的な過激さでいえばトリアー作品のなかで最も「おとなしい」作品ではあるけれど、全編がアメリカっつーか民主主義への皮肉に満ちてる。だけでなく常に被害者意識丸出しな黒人にだって問題はあるんだぜ?って言ってる。

トリアー作品にはその多くに「収穫」というキーワードが登場する。エピデミック、ドッグヴィル、ハウス・ジャック・ビルト、そしてマンダレイ。種を植えたら芽が出るのを待ち、成長し、実をつけたらザクザク刈り取っていく。その「無自覚な残酷性」の繰り返しで私たちの生活は成立していて、それは時代がどれだけ進もうが変わりようがない。刈る側が刈る対象をちゃんと育成しなければ、刈られる対象も反抗することなくおとなしくただ刈られていなければ、この世界は成り立たない。どちらも声高に権利の尊さを叫ぶことは許されず、ただ時の過ぎ行くがままに生きていかなければ、どこかで世界のバランスは崩れる。「平等」や「自由」を喧伝している奴らはそのことを理解しているのか?という、トリアーの病的平和理論が唱えられていて面白かった。が、これは家でじっくり見たいタイプの映画ですな。
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