【俳優がどうかな】
緒方明監督作品。
高校生時代交際していながら、或る事件がきっかけで分かれてしまい、今は50歳になっている中年男女。女(田中裕子)は独身を通して、朝は牛乳配達、昼はスーパーのレジ打ちの仕事をしている。男 (岸部一徳) は市役所勤務で、妻(仁科明子)は不治の病で死にかけている。そんな二人の日常生活と、男の妻が死んだことがきっかけで起こった出来事とを描いている。
舞台は長崎市で、作中そうは名指されていないが、坂が多く道の入り組んでいる。市電の走っている街の描写がたいへん丹念で優れている。そうした描写を土台に、市民たちのふだんの暮らしや、ちょっとしたアクシデントなどが淡々として綴られており、主人公二人の秘められた心情はそうした背景のなかにあってこそ、自然なものと思われてくるところが、この映画の特徴だろう。
ただ、残念ながら私は田中裕子が好きではなく(ウマイのは分かりますが)、岸部一徳も、独特の雰囲気のある人だけれど、この作品に合っているのかどうか、よく分からなかった。