WillowMarrais

恐怖のWillowMarraisのレビュー・感想・評価

恐怖(2009年製作の映画)
4.0
目で見ているものと心で見ているもの
事実と記憶は異なる。
幽霊という存在はそのどちらなのだろう。
ホラー映画を見るときに
いわゆるサプライズ的な描写や経験を求めてしまいがちだが、本質的に恐怖とは一回性ではなく永続的トラウマ的である。

この作品は人が見えているものと
見えないもの(見ることを制御されている)の境界線を無くすという実験もの。
知覚を広げるにはLSDなどが思いつくが
ここでは脳に直接手を加えている。
だからこそ、幻覚というよりは
むしろ本当に見えているかもしれないものを、見たことのない我々は口を挟めない(いやはや陳腐なCGではあるが)。

高橋洋は恐怖も光によって視覚化されると言う。光がないところに我々の「恐怖」は存在し得ない。寝ている時の悪夢もまた、脳が光を得ている(再現している)のかもしれない。

後半、黒沢清のような朽ちた家やクリシェ的な女が登場する。
このあたりはJホラー的ではある。
そして彼のイデオロギーはホラーという領域を超え、もはや美学や哲学に通ずるのではないかと思う。ベルクソンあたり。

「光がこちらを見ている」(ラカン)
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