三樹夫

ジュラシック・パークの三樹夫のレビュー・感想・評価

ジュラシック・パーク(1993年製作の映画)
4.5
このジュラパは恐竜映画であるとともに大人だが中身は子供のままの主人公が大人になるという成長の物語である。映画の締め方が主人公が大人になったという終わり方で成長物語要素は大きく、スピルバーグはその後でも『宇宙戦争』などで大人子供の主人公の成長を描いている。

大人子供の主人公の成長の大きなファクターは子供だ。冒頭のガキにラプトルに襲われたらどうなるかの話して嫌がらせするので、主人公の中身は子供のままということが分かる。またこのシーンはラプトルに襲われることがどうなるのかという予備知識を入れておくことで、後のラプトルに襲われるサスペンスを高める役割も持っている。ほんとスピルバーグ映画撮るの上手すぎやろが連発する映画だ。恐竜の話でまとわりついてくるティムを邪険にするので、中身はティムと全く変わらんのだなということが分かる。
成長のきっかけになるのがティムとアレックスがTレックスに襲われた時だ。子供を守ることで大人の自覚が芽生え成長する。木の上で3人寄り添っているシーンは本当にいい画だ。スピルバーグ映画撮るの上手すぎやろ。ラストもヘリの中で3人寄り添ってそれを嬉しそうに見ているエリーといういい画。

この映画には主人公以外にもう一人子供がいる。それはハモンドだ。ハモンドは中身が子供のまま老人になったような人物で、いつまでも子供心を持ち無邪気に恐竜のテーマパークを作る。
子供心と恐竜というのが合致してこの映画は素晴らしいものになっている。無邪気に恐竜が大好きと子供心を持っているのはアラン(とハモンド)、それに監督のスピルバーグと、恐竜が好きでこの映画を観る観客だ。初めて恐竜を見るシーンでは、恐竜が大好きでずっと見たいと思っていた主人公と、監督のスピルバーグと、恐竜が好きでこの映画を観ている観客の心が1つになって生み出される、やっと大好きな恐竜を見ることが出来たという感動だ。初めてブラキオサウルスを見るシーンは目に熱いものがこみ上げる。

この映画ではTレックスとラプトルに襲われるが、『ジョーズ』の手法というかもっと言えばヒッチコックの手法を使って、Tレックスはなかなか姿を見せずとんでもない恐ろしいものがいると存在を匂わせサスペンスを高める。リアル感と生物感を高めるため恐竜の鼻息が意識され、それをドアのガラスで可視化させるという、スピルバーグ映画撮るの上手すぎやろ。
またサミュエル・L・ジャクソンの片腕など残虐ギャグも健在で、弁護士が食われるシーンはドリフのコントみたいにトイレが開帳して笑う。
CGが導入されているがアニマトロニクスも多分に使用されており、CGと実在の物とを上手く混ぜ込み撮られている。CGは93年当時としては最先端のCGだが課題もあって、重量感に欠けるというものだ。音響で補われているが、よく言われるのは音を消してみると重量感を出すのに苦労していることが分かる。

当時は恐竜ブームがあり、戦隊ものでも『恐竜戦隊ジュウレンジャー』が作られたし、平成ゴジラシリーズでも結構恐竜がフィーチャーされていた。NHKでも『恐竜家族』が放送されていたし、恐竜のアニメもあった。蛍光塗料で暗闇で光る恐竜の骨組みの玩具も流行っていたように記憶している。そんな恐竜ブームを決定付けるかのような作品になっている。恐竜が流行っているから恐竜映画を作るのではなく、自分が恐竜が好きだから作る。なによりもまずスピルバーグって恐竜好きなんだなということがよく伝わるのがこの映画が名作たる所以のように思う。
あまり活躍の場がなかったカオス理論おじさんは次作では主役となっている。ジュラパの崩壊理由ってカオス理論っていうかあの産業スパイのせいよね。弁護士と産業スパイに関しては、ヒルみたいな弁護士とオタクは死ねというスピルバーグの心の恐竜の咆哮か。
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