りっく

ヒューゴの不思議な発明のりっくのレビュー・感想・評価

ヒューゴの不思議な発明(2011年製作の映画)
4.2
本作では映画史を語る上で欠かせない、ジョルジュ・メリエスという人物にスポットライトを当てる。
いわゆる「トリック撮影」によって作られた彼の映画は、当時の人々からすれば、まさに「マジック」であり、「イリュージョン」であったのだろう。
映画とは、今まで行ったことのない場所に、連れて行ってくれるものである。
そして、今まで見たことがないものを、見せてくれるものである。そこには今も昔も変わらない、普遍的な夢や感動や興奮が詰まっている。
だからこそ、映画は廃れず滅びず現存し続けているのだろう。

スコセッシは本作を3Dという手法を使って撮った。
そこに進歩したテクノロジーに対する、彼なりの回答が見えてくる。
本作の3Dは「飛び出す」という原初的な映画体験を再現するために用いられている。
それは、今から100年以上前に、列車が駅に到着した映像を観て逃げ惑った当時の人々と、現在の人々を繋げようとする試みでもある。
「新しいもの」を生み出すことは、「古いもの」を捨てることではない。
「新しいもの」を生み出すことによって、「古いもの」を再生させることさえできるのだ。
まさに、劇中で子供たちが、「機械人形」を動かしたように。
あるいは、再びメリエスに輝きを与えたように。

スコセッシは現在、古典映画の復元やリバイバル上映に尽力している。
時間とは残酷なもので、経てば経つほど消えてなくなってしまうものも数多くある。
映画もフィルムが消失・劣化し、二度と観られなくなってしまうかもしれない。
そんな「古いもの」をデジタル化という「新しいもの」で復元しようという試み。
あるいはそれらに色や音を付けて再生しようという試み。
それはなんと感慨深く、意義深いことなのか。
嫌味ではなく、本作はスコセッシ自身の活動を正当化するものでもあるのだ。
りっく

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