オーウェン

戦火のかなたのオーウェンのレビュー・感想・評価

戦火のかなた(1946年製作の映画)
5.0
イタリア映画のネオレアリズモの傑作と言うだけでは、この映画の素晴らしさを言い表わすのに充分ではないだろう。

当時ロベルト・ロッセリーニ監督の助監督であり、共同のシナリオライターであったフェデリコ・フェリーニは、彼の著「私は映画だ/夢と回想」の中で、次のように述懐している。

「-----『戦火のかなた』は私にとって映画との最初の、本物の接触だった。ここには私がロベルトから学んだ本物の教訓があった---それはカメラの前で謙虚であるということであり、ある意味で、撮影されたもの---人間、顔への驚くべき信頼だった」と。

とにかく、この映画に出てくる人間たちが素晴らしい。顔が素晴らしい。
不器用なくらいテクニックのないナイーヴな映画なので、びっくりする。

まるで初めて映画を発見するような感動に襲われる。
シンプルでスピーディーで無造作とも言える力強い演出が、映画的興奮を誘うばかりでなく、劇映画と記録映画が一本の作品の中に分かちがたく一体化している幸福な映画だ。

被占領下のイタリアのレジスタンスが、六つの短いエピソードで語られるが、ロベルト・ロッセリーニ監督は、実際に戦時下の1944年から1946年にかけてシチリア島、ナポリ、ローマ、フィレンツェ、ロマーニャ地方、ポー河のデルタ地帯にロケーションを敢行し、それぞれのロケ地で撮影隊のまわりに集まって来た群衆の中から出演者を選び、これらずぶの素人の生々しい現実感を生かすために、シナリオもセリフも書き直して撮ったということだ。

フィレンツェのエピソードとポー河のエピソードが、特に強烈で感動的でしたね。
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