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さくらんのvのレビュー・感想・評価

さくらん(2007年製作の映画)
3.0
廓を舞台にした本や漫画作品は色々あるとはいえ、やはり現代でメジャーなテーマとなるまではいかない。
歌舞伎では吉原が話の中心になることも多い。上方歌舞伎では、商家のぼんぼん(なよっとした色男、いわゆる「つっころばし」と言われる役どころ)が遊女に惚れ込む傾城ものも多い。弁当を食べたり、うたた寝をしたりと気軽な気持ちで観劇できた江戸時代の歌舞伎で、吉原は皆にとって身近なテーマとして受け入れられていた。
しかし吉原は失われてしまった。だから、現代では吉原を作品に取り込もうとすると、読者に理解してもらうために、説明部分が多くなってしまう。廓に馴染みがないから、内側の世界の描写だけで作品として成立してしまう。私たちにとっては、外界と絶たれ、独特な規律とルールに支配された吉原という世界を垣間みるだけで、新しくて面白い。でも、創作としては時代を逆行してしまってるのではないだろうか。江戸時代にはあれほど栄えた「遊郭」という創作のテーマが、皆の理解から遠ざかってしまったことで、ストーリーが深掘りされずに世界観の説明に終始してしまっている作品が多い。
原作を未読なので映画についてのみの感想となってしまうが、椎名林檎のジャズ風の楽曲と映像にはもちろん圧倒された。しかし、「遊女に身請け話が持ち上がるも、恋仲の見世の若い衆と駆け落ちしようとする」というストーリーは、ある種テンプレートをなぞっただけともいえる。そういう意味で、時代逆行的なのだ。


ネタバレ




最後は二人が桜の木に首を括った、という解釈なのだろうか?そこだけ気になった。
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