よーだ育休中

光る眼のよーだ育休中のレビュー・感想・評価

光る眼(1995年製作の映画)
3.0
合衆国の田舎町ミッドウィッチで、住民や家畜が一斉に意識を失い昏倒するという奇怪な事件が発生。住民たちは数時間後に意識を取り戻したものの、この日を境に多数の住民女性が受胎していた事実が判明する。


◆ Carpenter印のSFサスペンス

SFスリラーの名匠であるJohn Carpenter監督作品。リメイクとは知りませんでしたが、監督の作風にバチッとハマる作品だったと思います。冒頭から雄大な自然の空撮と、不気味な囁き声がざわざわとした雰囲気を醸し出すオープニング。俯瞰のショットと、地上をサーっと横切る影が、まるで宇宙人がUFOに乗りながら地上の様子を品定めをしている様でした。

音楽を監督本人が兼任していた今作は、冒頭からやはり音響への拘りを感じるシーンが多かった気がします。囁き声と共に始まるオープニング・シークエンスは勿論、住民一同パッタリ倒れた所での無音。引き算もしっかり効いていました。一斉に懐妊した女性たちが、一堂に会して出産するシーンも、低音の不協和音がまるで心拍音の様にドッドッ…ドッドッ…と、リズミカルに響いていました。

疾病の発作の様にバタバタと倒れていく住民が、意識を失ったことで不慮の事故(交通事故を起こしたり、BBQコンロの上に突っ伏して焼けてしまったり)を引き起こして亡くなってしまう演出。夫が単身赴任中の妻や、バージンの女性までもが妊娠していたと発覚する展開。本命の《光る眼》が登場する前からぞわぞわする嫌悪感を煽る演出(お膳立て)が上手い。


◆見た目は子供!頭脳は大人?

一斉に妊娠した女性たちから一斉に生まれた子供たちが普通なわけは勿論なく、(邦題が盛大なネタバレになっていますが)なんと眼が光ります。(小並感)

知能が高く、合理的かつ無感情的で、子供らしさの欠片もない子供たち。〝人類とは別の生き物〟と主張していて、子供たち一人一人の個性よりも、群個体としての統一目標(生存権)を優先して行動する様子には全く共感できません。オマセさんなんだからーではすまされない気色悪さ!

Mark Hamil演じる牧師の説教の中にも同じ様な言葉がありました。〝我々は其々の魂を尊ぶべきだが、大きな悪しき魂を大勢で共有している者たちがいるー〟とかなんとか。的を射ていたと思う。(射撃の的は外しましたが)

本来は庇護されるべき存在である子供が脅威となる今作。先入観や固定観念を逆手に取ったスリラー。見た目が子供であるということは勿論ですが、人智を超越した力を持っていながら人間と生活圏を共にすることの不自然さがまた気持ち悪いですね。自分達の天敵となり得る存在の子供を迎え入れて育てる様子が何ともグロテスク。


同監督の代表的なSFスリラー作品である《遊星からの物体X》のクリーチャーほど強靭ではないが、バカでもない。《ゼイリブ》に登場する骸骨風のエイリアンほど高度な科学力は持っていないが、脆くもない。

そして、それらの作品にそれぞれ登場するエイリアンたちほどキレッキレのビジュアルではないものの、人間に近しい姿形だから余計に不安感を煽る。(一名だけ死産となってしまった子供はしっかりグレイスタイルでしたが。この標本も他にもっと良い保管場所あったでしょうにw)

全編を通じて不安感を煽る演出がジワジワしていて、あんまり派手さはありませんでしたが、ラストで披露された父娘の精神的な対決(心の読み合い)は、緊迫感とスピード感があってよかった。