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飛行士の妻のtkykのレビュー・感想・評価

飛行士の妻(1980年製作の映画)
3.9
エリック・ロメールらしい偶然から巻き起こるドラマが今回も面白かった。その上本作は自分が観てきたロメール作品の中でも1番伏線が張られていた様に感じ、それが印象的だった。
伏線として書き置きやメモが何度も出てくるがそれらが時代を感じさせた。今だったらメモ用紙やペンがなくてもいくらでも連絡を取れるが、本作ではそれらの有無が物語を左右する役割を担っており、時代を感じさせると共に偶然を生み出す機能として適役だと思った。

登場人物の個性が光っていたのもロメール作品らしかった。フランソワ、アンヌ、リュッシーの3人、特にアンヌとリュッシーは自分独自の芯がある女性である点で非常にロメール作品ぽさを感じた。彼女らが言う恋愛観はイマイチ共感しにくいというか馴染みがないが、他の映画では見ないような人物像は魅力的だった。立ち振る舞いも魅力的で、リュッシーに関しては15歳とは思えないほどオシャレでセクシーだった。カフェからの去り際の振る舞いは特に印象的だった。
女性2人の影に隠れて印象が薄いように思えたフランソワに関しても最後に強烈な余韻を残していた。前述したように本作は書き置きやメモ用紙が伏線となっているが、最後の場面での伏線の回収の仕方は傍から見れば何でもない行動に非常に大きな意味を持たせており、フランソワの隠された人間性や思いを不気味に表出させていた。この場面によってホラー的な余韻が生まれていた。

「喜劇と格言劇」シリーズの残りも楽しみになった。
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