そーた

フリーダのそーたのレビュー・感想・評価

フリーダ(2002年製作の映画)
4.6
「To Diego and Frida.」

何年か前に、名古屋市美術館のメキシコ・ルネサンス作品群なるコレクションの存在を知り、わざわざ新幹線と私鉄を乗り継いでそれを見に行った事があります。

そこでディエゴ・リベラやシケイロスなど、メキシコ壁画運動時代に活躍した巨匠達の作品を実際に目にすることができました。

その美術館で一番楽しみにしていたのがフリーダ・カーロ。

彼女の絵を日本で見られるのってここだけなんですって。
だから期待が膨らみに膨らんでしまって、会場でついに対面。

あら、凄く小さい。
何だかちょっと残念な印象でした。

というわけで、この伝記映画。
わざわざ名古屋まで行かなくても、
これを見れば良かったのかな···

孤高の画家、フリーダ・カーロの半生をユニークな演出と豪華な俳優陣の演技で彩ったこの作品。

とにかく、フリーダを演じたサルマ・ハエックがもの凄かった。

役者としての全てを見せ付けるかのように、16才から47才のフリーダを演じ切っていました。
豊かで飾り気のない表情や仕草に、
情熱的で挑発するような歌とダンス。
そして勢い良く酒を体に流し込む飲みっぷり。

1920年代から50年代の激動の時代を生き抜いたフリーダ・カーロという人間を、まるでありのままに写しとったかのようでした。

生きるという行為を地でいく彼女の生き様には作為がなく、
そしてその作為のなさはそのまま彼女の絵画の特徴でもあります。

作為のない自由さ。

その性質に感じ入ったメキシコ芸術界の巨匠ディエゴ・リベラは、
自身の精神世界を表現したフリーダにとことん引き付けられていきます。

彼を演じたアルフレッド・モリナ。
イギリスの俳優さんで、この役のために20kgも太ったんだとか。

この人の演技が本当に素晴らしかった。
女たらしで最低なディエゴという人間。
そんな彼のピュアな感性と心情が演技からストレートに伝わってきました。

病院でフリーダの絵を見て涙を流すシーン。
ディエゴの芸術家としての感性と、
フリーダに対する深い愛が重なりあった瞬間。
本当に切ない場面でした。

魅力的なシーンは他にも沢山あるけれど1つに絞るのは難しい。
ただ、何と言っても一番の見所は、サルマ・ハエックとアルフレッド・モリナの息の合った掛け合い。

彼らの演技を見ることは、
同時にフリーダとディエゴという二人の芸術家がどのように愛し合い、添い遂げたかを見届ける事でもあります。

そう言ってしまえる程に、
二人の演技は真に迫っていました。

恐慌や革命に政治運動という荒れた時代のメキシコに、
フリーダとディエゴという二人の強烈な個性が実在し、
時代に翻弄されながらも引かれ合い、傷つけ合い、求め合った。

そんな事を思えば、
名古屋で見たフリーダの絵のサイズに落胆した僕はなんて小さいんだろう。

悲劇的な人生の全てを絵に昇華させた彼女の思いと、それを支えたディエゴの愛。

この目でもう一度確かめに行きたくなりました。

その時は、「To Diego and Frida.」。
こう、祝福させて下さい。

うん。
また、いつか必ず。
そーた

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