スローモーション男

サンタ・サングレ/聖なる血のスローモーション男のレビュー・感想・評価

4.0
 「エルトポ」「ホーリーマウンテン」と摩訶不思議な難解映画を撮ったアレハンドロホドロフスキーが非常に分かりやすいファンタジーラブストーリーを作り上げた。

精神病院の病室で木上にいる全裸の男フェニックス。昔、サーカス団員だった父と母の殺し合いを見てトラウマになり病んでしまったが、両手を失くした母が戻り生活を再開する。しかし、母親に操られ他の女性たちを次々と殺していく。

分かりやすいと言いましたが、ホドロフスキーなので謎のキャラクター、動物、メタファーなどが出てきます。
それでも内容は、親に縛られた男が運命の人と再開し、自我を解放させようとする普遍的な物語。

ホドロフスキーは普通が嫌いだと語っています。どんな人間も異常であると。この映画では障害を持つ人々がたくさん出てきますがそのなかで差別や偏見、希望、友情というものを描いている。
すべてが異常であり通常なのだと。

この映画が最後にもたらした意味は感動的であり、悲しみのなかに自己完結を入れ込んでいる。それが本当に素晴らしいです!
ホドロフスキーの入門はこの作品がいいかも知れません。

好きなシーンは象が死ぬところです。生死の恐ろしさを、これほどまで感じたのは今だかつてないです。